みなさんは、岡田嘉子を知っていますか?日本映画を代表する大スターでした。
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小津安二郎監督の映画にも出ています。
その大女優が1938年、ソビエトに越境したというニュースが流れました。
杉本良吉と、理想的な平等社会・ソビエトに・・・理想のユートピア新しい芸術を求めてのことでした。
ソビエトには、現代演劇における最高峰の一人であるメイエルホリドがいました。
1947年に釈放されましたが、その足跡を、パリのおば様こと、女優・岸恵子が辿りました。
岡田嘉子は1992年2月10日に享年89歳で亡くなりましたが、生前には苦難の歴史がありました。
岡田嘉子は、映画女優として成功していましたが、人形のような自分はいや!!と、新天地を求めてソ連へと越境しました。二人とも配偶者があったにも関わらず・・・。
演出家の杉本良吉は、共産党員で、日中戦争が始まる中、徴兵を逃れるため、また、ソビエトの芸術を勉強するために越境したのでした。
越境した後、密入国という罪で尋問されます。拷問にあい、スパイと判決が出されました。
ユートピアと思って行った国は、当時暗黒のスターリンの時代。次々と強制収容所に送られていました。越境した二人を待っていたのはKGBでした。
1939年6月まで取り調べが続きます。その時、岡田嘉子は虚偽の自白をします。あまりの拷問に、自分はスパイだと・・・。
9月に判決が下ります。日本のスパイとされ、禁錮・・・強制収容所で10年を過ごすことになります。強制収容所では木の伐採作業に従事し、体を壊して診療所へ送られます。明日はどうなるかわからない・・・予測のできない世界でした。
恋と芸術を求めて越境したソビエトで得たものは、越境した喜び、悲しみ、そして屈辱も・・・。
当時、日中戦争でしたが、ソ連も参戦するかどうかの判断がされようとしていました。興味のある日本・・・。そのために、日本人たちは一つの場所に集められたようです。当局によって彼女の経歴がでっち上げられます。戦争のために、日本語を教える日々は5年間も続きました。
でっち上げられた経歴を持ったまま、1947年12月3日釈放命令が下ります。
9年と10か月の収容所生活・・・その後、出版社に勤めることになります。
1948年モスクワ放送日本語科就職します。
1954年演劇大学に入学。日本を越境した目的の、初心を貫いたのです。
卒業後、マヤコフスキー劇場の演出助手となります。女優、そして、演出家として活躍します。
1953年スターリンが死去、フルシチョフによってスターリン批判が始まります。
岡田嘉子には、名誉回復書と一緒に、杉本良吉の死亡証明書が届けられました。
杉本良吉は、越境してすぐの拷問で、32歳の若さで銃殺されていました。亡くなったのは、病死と知らされていましたが、その死は、自分がスパイと自白したからの銃殺・・・。自分のせいで、自分の愛する人が亡くなってしまっていたのです。この悔恨の思いは、誰にも語ることはありませんでした。
1985年に始まったゴルバチョフのペレストロイカを熱狂的に支持をします。そこで、グラスノスチ=情報公開が行われます。
そして1989年、モスクワ市検察局検事補が岡田嘉子の元を訪れます。1940年二人が支持した現代演劇における最高峰の一人であるメイエルホリド、彼は日本陸軍のスパイとされた、杉本良吉の自白によって銃殺されていました。
たまたま日ソ関係が最悪の時期に密入国して、メイエルホリドや彼と結びつく佐野の名前を口にした杉本がその「最後の仕上げに利用されただけ」とはいえ、愛した男と支持した憧れの人が死んだのは、すべて自分のせいだったのです。
岡田嘉子はソチで亡くなります。そして、ドンスコイ墓地で葬儀が行われ、遺骨は日本へと帰ってきました。
その後、遺骨もどこにあるかわからなかった杉本良吉は、生前、ニコライ・オフトロスキーの「鋼鉄はいかに鍛えられたか」を日本語訳していたため、ドンスコイ墓地に葬られていたことがわかります。
そこは、岡田嘉子の葬儀が行われた場所でした。もし、杉本良吉が葬られていると知っていたら・・・。遺骨は日本には帰ってこなかったのかもしれません。
彼等が越境した時代、まさに時代が悪かった、スターリンの社会主義の実現によって、命まで奪われるという痛ましい時代だったのです。
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