池上彰が伝える世界の今〜アラブの春〜
本当にアラブの春だったのでしょうか?
このアラブの春とは、中東や北アフリカで起きた大規模な民主化運動です。
1月にチュニジア、2月にエジプト、8月にリビアの三か国で独裁政権が崩壊しました。
では、独裁政権が中東やアフリカに多いのは?
@民族間の争いを強い力を持って征するから。
A王国を軍部が裏切って作っているため、他人を信用できない=独裁政権
となっていったのですが、この独裁政権を許してきた国際社会もありました。
この独裁政権には産油国が多いのです。この親米な独裁政権が国内の反米感情を抑えることに一役買っていました。お互い都合のいい関係だったのです。
でも、エリトリアではデモすら起こすことが出来ません。1993年イサイアス大統領の下、エチオピアから独立しますが、今ではアフリカの北朝鮮と言われています。1998年〜2001年にかけて、領土問題をめぐり再びエチオピアと戦争、多くの国民が死亡します。国民は大統領を批判しますが、逆らう人は即逮捕、民主的な憲法は出来たものの、施行されていません。
この国は、またの名を刑務所国家といわれています。それは、独自の徴兵制=ナショナルサービス(国家奉仕)で1年半の徴兵が無制限となり、肉体労働やきつい仕事を強要されています。
月3000人が逃亡し、過去10年間に約22万人およそ人口の5%が国外逃亡を図りました。人がいなくなると国もなくなるので、彼らは逮捕され、長期拘束されるのです。
しかし、独裁国家の中にはデモの起きない国もあります。経済成長率NO,!のカタールです。世襲制のカタールですが、今年もこの不景気の中、10%の成長率を持っています。ハマド首長の下、政党も存在しない独裁国家なのにです。
独裁国家のメリットは、独裁者の決断で決まるので行動に移るのが早いということです。この国のドーハ、天然ガスが出ることで有名ですが、資源に頼らない国家作りを目指し、イギリスのハロッズを2000億円で、シンガポールのラッフルズホテルを220億円で買収、FCバルセロナのスポンサー契約で年間30億円投資しています。
日本では考えられないほどの満足のいく国民生活です。充実した社会保障、所得税・消費税なし、教育費・医療費無料、他にも国営企業に5年勤めると年金がもらえて生涯安泰なのです。
すべての独裁国家が悪いわけではないのです。
では、最近独裁国家が崩壊したリビアでは?
リビアは政党や選挙も無く、42年間カダフィ大佐の独裁でした。今年2月、不満が爆発し、米・英・仏など多国籍軍が介入し、半年後反カダフィ派が首都を制圧しました。
では、これから国はどうなっていくのでしょうか?
独裁国家→議会選挙→憲法制定→大統領選挙→民主化
と、なるのですが・・・。
大喜びのリビア国民ですが、未だにカダフィは姿を隠して徹底抗戦の構えです。一部の街では戦闘が続行中、でも、外を見てみると資源をめぐる大国の利権争いがありました。リビアの石油埋蔵量は世界8位、それも、とても良い質の原油なのです。
国民評議会は、「カダフィとの戦いを支援した国に優遇措置をとる」としました。支持したのは米・英・仏、率先して空爆を支持したのはフランスでした。
これを見ると、民主化とか、独裁とか関係なく、民主化という綺麗な言葉の意味には色々な意味が含まれているのです・・・。
エジプトは、革命から8ヶ月経ちましたが、色々と悪影響が出てきています。まず、
@経済の悪化
今年2月にムバラクが辞任し30年にわたる独裁政治に終止符が打たれます。エジプトでは「国民は自由な活動が出来、より経済は発展するだろう」と、思っていましたが、革命の混乱で外国人観光客が激減・・・。今もまだ戻っておらず、失業率は9%から12%へ。
政治にたいする不満もあります。ムバラク政権崩壊後、暫定政府として統治権を委ねられたのが、エジプト軍最高評議会なのですが、このエジプト軍最高評議会は、ムバラク政権を支えたタンタウィ議長が国家元首を代行しているのです。「何故まだ軍が仕切っているのか?早く選挙を」という批判が出てきたのです。
長期独裁政権は倒れたのに、政治改革は一向に進まない・・・。
A宗教対立
エジプトは、殆どがイスラム教と思われがちですが、一割はコプト教といわれるキリスト教徒です。昔から攻撃を受けてきましたが、一部のイスラム原理主義者がコプト教会を襲撃しているのです。また、コプト教会も軍と対立しています。
人々は、革命後は混乱が続くことを理解し、本当の民主化に向けて一歩一歩進んでいるのです。
独裁政権として世界中から非難されているのはシリア(152位)です。殺人マシンといわれています。
アサド大統領は、反政府デモを弾圧、多数の死者が出ています。
この恐怖政治の象徴とされているのが、「ハマの大虐殺(1982)」です。今のアサド大統領の父、アーフェズ・アサドの時代、抑圧された民衆がハマで立ち上がります。が、街全体を砲撃、戦車で潰し、壊滅状態にするのです。推定1〜3万人の人が犠牲になりました。しかし、報道の自由も無く、世界に知られることはありませんでした。
現在でも、アサドは反政府デモを戦車部隊などで弾圧、電気・電話・物流を遮断し、兵糧攻めにし、おまけに艦砲射撃で街を攻撃しているのです。
この事実は、インターネットの投稿でぐらいしかわからないのです。
今年の3月以降、デモの参加者3000人以上が死亡しますが、欧米諸国はリビアに軍事介入したようにシリアには軍事介入しないのです。
それは、軍事介入には多額の費用がかかります。シリアには石油は無いのです。
他にも、イスラエルが関係しています。
シリアは、イスラエルのハマス、レバノンのヒスボラ、イランを、支援しています。また、シリアとイスラエルは30年以上大規模な衝突は起きていないものの今も戦争状態なのです。つまり、アサドを倒す津、微妙なバランスが崩れ、中東全体が混乱することになりかねないのです。
他にも、イスラエルをめぐり、世界中が大混乱しています。
9月9日カイロ市内のイスラエル大使館を暴徒化した数百人のデモ隊が襲撃、死者3人、450人以上が負傷します。
エジプトでも反イスラエル感情が芽生えているのです。なぜ、高まっているのか?今後行われる選挙に重大な影響を持つと言われているムスリム同胞団によると、もともと一部のエジプト人は、イスラエルを憎悪しているとの事。それは、以前血みどろの戦いをしたことがあり、新政権になった今でも、親イスラエル、新欧米が変わらないから・・・。
アラブの春なのに・・・。今まで抑えつけられてきた反イスラエル感情が独裁政権崩壊によって表面化したのだというのです。
これはエジプトに限らず、ヨルダンも、親イスラエルだったトルコも軍事協力を凍結・・・。反イスラエルになり、イスラエルの孤立化が進んでいます。
おまけに、パレスチナが国連加盟に申請しました。これは、アラブの春の影響だといわれています。
しかし、根本はやはり60年続く、パレスチナ問題です。
もともとパレスチナにはアラブ人が住んでいました。1940年代、ヨーロッパで600万人とも言われる多くのユダヤ人が虐殺されます。そして、ユダヤ人は自分達は2000年も放浪している。自分のふるさとに戻りたい!!と思うようになるのです。そこで、イギリスの三枚舌によって出来た国がイスラエルです。
そうなると、今までパレスチナに住んでいたアラブ人が難民となります。(パレスチナ難民)つまり、アラブの人たちは、同じ民族として同情しているのです。
1948年イスラエルの建国以来、何度も戦争を繰り返してきました。最近は、イスラエルがパレスチナ自治区にユダヤ人居住区を広げて・・。ますます反イスラエル感情が高まるのです。
パレスチナの人々の感情も抑えられずに、アッパス議長はパレスチナを国として認めて欲しいと国連に申請します。
しかし、アメリカは反対します。去年の9月にオバマ大統領は「2011年9月までに国連に加盟したパレスチナ国家を見てみたい」と言っていたのに・・・。
アメリカには常任理事国としての拒否権があります。では、何故拒否したのでしょうか?それは、アメリカにとってはイスラエルの問題は国内問題だからです。
アメリカの政治経済社会では、ユダヤ人の影響力は甚大で、イスラエルに住むユダヤ人540万、アメリカに住んでいるユダヤ人530万・・・。イスラエルに味方をしないと次の選挙に勝てないのです。
それを知ったアラブ人たちは「話が違う!!」と、猛反発。
アラブの春は、今までは民主化を求めていましたが、現在では反イスラエル、反米感情が高まってきているのです。
アラブの春で中東情勢が混沌とし、紛争の火種になろうとしているのです。
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